春日凛 第一声
壇上に立った少女は、息を吸った。
「——あたしね、お盆の親戚の集まりが好きだった」
会場がざわつく。
「従兄弟がいっぱいいて、うるさくて、おばあちゃんが怒って、でも笑ってて。
縁側で花火して、スイカ食べて、夜は雑魚寝して。
……あれが、家族だと思ってた」
目を伏せる。
「最近、静かになった。
従兄弟たち、誰も子ども連れてこない。
叔母さんは『産まない』って決めたって。
テーブルに座ってるの、おじいちゃんおばあちゃんと、あたしだけ」
顔を上げる。
「——あの賑やかさ、どこ行ったの?」
声が少し震える。
「あたしの母校、来年なくなるんだって。統廃合。子どもが足りないから。
……あたしが走った廊下、もう誰も走らないんだ」
間。
「この前、地元の公園の横通った。遊具、撤去されてた。
使う子がいないから、だって」
マイクを握り直す。
「ねえ、おかしくない? あたしが遊んでた場所が、あたしが通った学校が、
あたしが生きてる間に消えていくの。
——子どもがいないって、そういうことなんだよ」
「あたしは、子どもの声がする場所が好き。電車で赤ちゃん泣いてると、なんか安心する。
子どもがいっぱいいる国がいい。」
間。
「——でもこの国は、それを諦めた」
声が変わる。冷たくなる。
「私たちの国では、毎年60万人ずつ減ってる。
学校が廃校になって、公園から声が消えて、
商店街がシャッターだらけになって。
で、政府は何て言った?」
少女は吐き捨てた。
「『移民を入れましょう』」
会場が静まる。
「……ねえ、それ、おかしくない?
自分たちの子ども、増やす努力しないで、
外から連れてきて穴埋めするの?
それ、家族じゃないじゃん。」
マイクを握り直す。
「あたしは別に、外国人が嫌いなわけじゃない。
でもね——
お盆に関節痛いのに関わらずひ孫抱いて笑うおばあちゃんの横に、
知らない言葉を喋る知らない人が座ってるの、あたしは嫌だ。」
声が大きくなる。
「移民政策ってのは、
『もう自分たちでは増やせません』って、
白旗上げてるのと同じなんだよ。
なんで誰も怒らないの?
なんで『しょうがない』で済ませるの?
——しょうがなくないよ。全然。」
少女は一歩、前に出た。
「あたしたちは、子どもを産める。
産んで、育てて、この国を続けていける。
その力を奪ったのは、誰?
給料削って、将来潰して、結婚を贅沢品にして、
『産まないのは自己責任』って言った、あんたたちでしょ」
息を吸う。
「あたしは、政治家になりたいんじゃない。お盆の、あの賑やかさを、取り戻したいだけ」
会場が静まる。
「子どもの声がする国。赤ちゃんが泣いてる電車。
それを諦めるな。
学校を残せ。公園に声を戻せ。
商店街にベビーカーを走らせろ。
電車で泣いてる赤ちゃんを、うるさいって言わせるな。
この国を静かにさせるな。」
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拍手が、一つ。
波になる。
少女の目が、燃えていた。
「あたしは絶対、たくさん産む。五人でも六人でも産んでやる。
あいつらが静かにした国を、あたしが賑やかにしてやる。
だから——」
マイクを握りしめる。
「——一緒にやろう」
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table:構造
パート 内容 感情
導入 親戚の集まりの思い出 郷愁、喪失感
転換 出生率、移民政策批判 怒り、困惑
核心 「おばあちゃんの横に知らない人」 素朴な拒否感
告発 「産めない社会を作ったのは誰か」 切迫、糾弾
結論 「この国を静かにさせるな」 アジテーション
若く、青臭いキャラクター
「正しいかどうか」じゃなくて「好きかどうか」で政治を語ってる。
「好き」を国家政策に直結させる飛躍が、このキャラの危うさ。
「おばあちゃんの横に知らない人が座ってるのは嫌」——これは排外主義の萌芽だけど、本人は「家族を守りたいだけ」と思ってる。
そもそも知らない人が座ることは現実的にありえないが、映像を聞き手に想像させることに特化したシナリオを描いている基素.icon